kintoneで休暇・時短などの申請・承認は簡単に構築可能。承認されたデータを人事給与システムにデータを連携するには?

kintoneで休暇・時短などの申請・承認は簡単に構築可能。承認されたデータを人事給与システムにデータを連携するには?

手作業の「30分」に潜む経営リスク

先日、ある経営者の方からこんなご相談を受けました。「コロナ禍を機に現場主導でkintoneを導入し、紙で行っていた休暇や時短の申請・承認をデジタル化しました。手作業が減り、非常に満足しています。ただ、承認されたデータを人事給与システムに連携する作業だけは、担当者が毎日手作業で行っているんですよね……」

従業員50名ほどの製造業であるその会社では、ITに強い人事担当者がマニュアルを見ながら自力で申請システムを構築されたそうです。kintoneは直感的に操作でき、上司から人事部長へ繋ぐような柔軟なワークフローも簡単に組めます。担当者曰く「CSVを加工してOBIC(オービック)に取り込む作業なんて、毎日30分もあれば終わります」とのことでした。

しかし、私が危機感を覚えたのはその先です。「では、その担当者の方が病気や旅行で一週間休んだら、その業務はどうなりますか?」と尋ねると、経営者の方はハッと息をのまれました。「担当者しかやり方が分からない」という状態は、どれほど作業時間が短くても、組織にとって大きなボトルホールのリスクを孕んでいるのです。

「ノーコードで完結」という一般論の罠

「kintoneのようなノーコードツールを使えば、IT知識がなくても業務改善は完結する」——これが昨今よく耳にする一般的な通説です。確かに、物品の購入申請や簡易的な在庫管理、休暇申請といった「部署内で完結する業務」であれば、ノーコードツールだけで十分に成果を上げられます。

しかし、ここには大きな落とし穴が存在します。ノーコードツールが得意とするのは、あくまで「特定の業務データの収集と承認」までです。企業活動の核となる基幹システム(今回で言えば人事給与システムのOBICなど)へデータを渡す段になると、途端に壁にぶつかります。

結果として、多くの企業が「kintoneからCSVをダウンロードし、Excelでフォーマットを加工し、基幹システムにインポートする」という、泥臭い手作業を間に挟むことになります。これでは「業務のデジタル化」を果たしたとは言えず、単に「紙の転記作業」が「データの加工・転記作業」に置き換わったに過ぎません。「ノーコードだけで現場の業務効率化は完結する」という認識こそが、実は真の自動化を阻むボトルネックなのです。

高額な連携ツールは不要。鍵は「GAS×AI」

基幹システムとの連携と聞くと、多くの経営者は「数十万〜数百万の予算をかけて専用の連携システム(EAIツール)を導入するか、システムベンダーに開発を外注しなければならない」と考えがちです。しかし、これもまた大きな誤解です。中小企業に必要なのは、大掛かりなシステム投資ではありません。

今回ご紹介した企業が選択したのは、Googleが無料で提供している「Google Apps Script(GAS)」の活用でした。GASはJavaScriptベースの言語ですが、kintoneからのデータ取得や別システムへのデータ連携に必要なコードは、実は100〜200行程度の非常にシンプルなものです。

「うちの社員にプログラムなんて書けない」と思われるかもしれません。しかし現在では、ChatGPTをはじめとする生成AI(AIコーディング)が存在します。件の担当者も、ChatGPTにコードの書き方やエラーの解決方法を教わりながら、わずか1ヶ月程度で連携プログラムを自作してしまいました。AIを活用すれば、非エンジニアであっても社内システムの自動連携を実現できる時代になっているのです。

「半自動化」と「エラー自動通知」で属人性を排除する

GASを活用した連携の最大の強みは、コスト面だけではありません。「タイマー機能」による自由な自動実行と、高度なエラーハンドリングが可能な点にあります。

この企業では、毎日夕方の決まった時間にGASが自動で実行され、kintoneの承認データを抽出・加工する仕組みを構築しました。さらに「万が一プログラムでエラーが発生した場合は、即座に担当者へメール通知が飛ぶ」という仕掛けを取り入れました。

これにより、日々の30〜40分程度の手作業が完全に不要になったばかりか、「正常に動いているかを毎日人間が監視する」という手間すらも解消された「半自動化」の運用が実現しました。属人化していた「データ加工手順」がプログラムとして明文化されたことで、担当者が不在であってもシステムが確実に業務を遂行してくれる安心感が生まれたのです。

社内人材の成長がもたらす組織全体のイノベーション

ここで改めて本稿の論理を整理します。

第一に、ノーコードツールによる現場主導の業務改善は非常に有効ですが、基幹システムとの繋ぎ込みを手作業に頼っていては真の効率化になりません。第二に、その課題を解決するために高額なシステム開発は不要であり、GASと生成AI(ChatGPT)を組み合わせることで、社内人材の手で十分にAPI連携の仕組みを構築可能です。そして第三に、タイマー実行とエラー通知を組み合わせた「自動化」こそが、業務の属人性を排除し、組織の持続可能性を高めます。

この取り組みには、単なる「作業時間の削減」以上の大きな副産物がありました。生成AIを使ったコーディングスキルを身につけた件の人事担当者は、自動化の面白さとインパクトを体感し、自発的に他部署の業務改善にも乗り出すようになったのです。今では経理部などからの「こんな作業も自動化できないか」という相談に応え、会社全体の業務効率化を牽引するデジタル人材へと大きく成長を遂げています。

「たかが毎日の30分」と見過ごさず、APIとAIを活用した一歩を踏み出すこと。それこそが、現場の業務を劇的に変え、未来のデジタル人材を社内から育てる最高の一手になると、この事例を通じて実感しました。