暗闇の経営から「見通せる経営」へ|基幹データを繋ぐ「リアルタイム経営ダッシュボード」の全貌
前回のコラムでは、経営数式の具体的なアプローチについてお話ししました。まずは「顧客別・製品別の売上・原価・粗利」を明確にすること。これだけで、経営改善に向けた具体的で実効性の高い対策の大半を打てるようになります。さらに進めれば、販売管理費を含めた顧客ごとの営業利益の算出や、共通固定費の配賦といったロジックへ展開することも可能ですが、それらも基本の考え方さえ押さえておけば決して難しいものではありません。
しかし、重要なのは「経営数式は、一度作って終わりではない」ということです。
構成した経営数式に実際の現場データを当てはめ、まずは「今月の粗利」を試算してみます。その結果が経営者自身の皮膚感覚とズレているのであれば、数式の前提条件や配賦ロジックを見直す必要があります。経営数式には唯一絶対の正解が存在するわけではありません。大切なのは「経営者の持つ感覚」と「現場から上がってくる数字」が違和感なく一致することです。
両者が合致したとき、経営者はまるで自分の手足を動かすかのように、確信を持って現場へ具体的かつ的確な指示を出せるようになります。
基幹システム(データベース)からデータを抽出し、数式を動かす
ただし、前述の通り製造業における原価の配賦計算は非常に複雑です。
ごくシンプルな加工工程や商社のような業態であればExcelでも運用できるかもしれませんが、一定規模の製造現場では手作業の限界を超えてしまいます。そのため、すでに社内に導入されている生産管理システムや基幹データベースから必要な数値を抽出し、自動計算させる仕組み(システム)が不可欠となります。
私はこれまで、OracleやBPCS、Sytelineといったグローバルで実績のある製造業向けERPパッケージをはじめ、知名度の低い海外製生産管理ソフト、さらには自社構築のスクラッチシステムまで、数多くのシステム環境に対応してきました。その経験から確信を持って言えるのは、どのようなシステムであっても、裏側で保持されているデータベースの構造(データ保持の基本)は本質的に同じであるということです。
適切なデータ設計のもとでデータベースから必要な要素を取り出す仕掛けさえ作れば、PC1台でどんなに複雑な経営数式であっても自在に計算処理を実行できるようになります。
パッケージの「お仕着せダッシュボード」では意味がない
計算環境が整えば、あとはその結果をWebブラウザやタブレット、スマートフォンなどの画面上に、視覚的にわかりやすく表示させるだけです。これが、いわゆる「経営ダッシュボード」や「コックピット型経営」と呼ばれる運用スタイルです。
ここで一つ、強く注意すべきポイントがあります。
一般的な市販ERPソフトにも「経営ダッシュボード機能」は標準搭載されていますが、そこに並ぶのは「全社売上高」「営業利益率」「顧客別売上ランキング」「在庫回転率」といった、どこにでもある汎用的な数字ばかりです。こうした大枠の管理数字を眺めているだけでは、第1回でお話ししたような「現場で明日から何を変えるべきか」という具体的な指示出しには全く役に立ちません。私自身、この画面を見て「これでは現場は動かない」と感じた経験があります。
標準機能のダッシュボードに飛びつくのではなく、まずは自社固有の「経営数式」を泥臭く構築することが何よりも先決なのです。
飛行機を操縦するように、確信を持って経営する
自社専用の経営数式とリアルタイムのデータが組み合わさったダッシュボードが完成すると、経営の景色は激変します。
経営者は、あたかも高度な計器類を備えたコックピットで飛行機を操縦するように、自社の状況をリアルタイムで把握し、現場へピンポイントの指示を出せるようになります。さらに素晴らしいのは、自分の指示によって現場の数値がどう変化したのかを、翌日・翌週のデータで即座に検証できる点です。仮に打ち手が裏目に出たり想定と違ったりした場合でも、手遅れになる前に即座に軌道修正を図ることができます。
暗闇の中で根拠のない号令を掛け続ける経営から脱却し、確かな数字の裏付けをもって会社を目的地へ導く——。
手探りの混乱を経験してきたからこそ、すべての製造業の経営者やリーダーの方々に、この「経営数式とダッシュボードによる経営管理」の素晴らしさを、私自身の体験としてお伝えしたいと考えています。