ベンダー任せで遅延を繰り返した私が、自社側に「業務とシステムが分かる」人を立てて導入を主導するようになった話

ベンダー任せで遅延を繰り返した私が、自社側に「業務とシステムが分かる」人を立てて導入を主導するようになった話

現場で痛感したシステム導入の落とし穴

「ベンダーに任せておけば安心」「社内にはITの専門家がいないから」――そう考えてシステム開発を丸投げした結果、スケジュールの遅延や予算の膨張に悩まされる企業は後を絶ちません。私はこれまで、クライアントの立場としてベンダーをコントロールするコンサルタントとしても、逆にクライアントを支援する開発ベンダー側としても、双方の現場に深く携わってきました。その双方の視点を経験したからこそ強く実感しているのは、プロジェクト成功の鍵は自社側に「業務とシステムの両方が分かるプロジェクトマネージャー(PM)」を立てられるかどうかにある、という動かしがたい事実です。

システム導入が上手くいかない中小企業の多くは、このPMの重要性に気づいていないか、気づいていても立て方を誤っています。社内リソースだけで対応しようとして迷走するか、あるいはベンダーの言いなりになって想定と異なるシステムを納品されるかです。自社主導でプロジェクトを進める体制を作らない限り、この構造的なリスクから抜け出すことはできません。

高額な大手コンサルとベンダー任せの危険性

自社側にPMを立てようとする際、中小企業が最初にぶつかる壁が「費用の高さ」です。大手のITコンサルティング会社に頼むと、PM1人で月額200万円、チーム体制だと月額300万円といった費用が発生します。これが数ヶ月続くだけで、システムそのものの開発費よりもPMの人件費が高くなってしまうという逆転現象が起きかねません。結果として「そんな予算はない」と諦め、開発ベンダーのPMにプロジェクト進行を任せてしまうケースが非常に多く見られます。私自身、この判断が後に大きな後悔につながる現場を何度も見てきました。

しかし、ベンダー側のPMに舵取りを委ねるのは極めて危険です。なぜなら、開発ベンダーには「自社の工数を抑え、利益率を高めたい」という根本的なモチベーションがあるからです。いくら信頼できるパートナーであっても、ベンダー所属のPMが双方の間に立った場合、どうしてもベンダー側の都合や意向に沿った判断に傾きやすくなります。クライアントにとって本当に必要な機能であっても、「仕様変更には追加費用がかかる」「納期に間に合わない」と退けられ、結果として自社の業務にフィットしないシステムが出来上がってしまうのです。

「頼もしいコンサル」ほどプロジェクトを停滞させる

それならばと「多少高くても外部からクライアント側のPMを雇おう」と考えるかもしれませんが、ここにも大きな罠が存在します。実は、世の中にはシステム開発の実務経験がほとんどないにもかかわらず、「ITコンサルタント」と名乗っている人物が少なくありません。彼らは一見すると、社内の業務フローを丁寧に理解し、クライアントの立場に寄り添ってベンダーへ強気に対峙してくれる非常に頼もしい存在に見えます。

しかし、開発現場の感覚がないまま外部PMがベンダーに無理な要求を突き通そうとすると、ベンダー側は急速に戦意を喪失します。「このクライアントとは最低限の対応にとどめよう」と防御姿勢に入り、要望が増えるたびにスケジュールの延長や追加費用を主張するようになります。さらに厄介なことに、外部PM自身も導入期間が長引くほど自らの契約期間が延び、報酬が増えるビジネスモデルになっています。そのため、スケジュールの延長に対して強く反対せず、むしろ容認してしまう構造があるのです。クライアントの味方に見えたPMが、実はプロジェクトの遅延とコスト高を招く要因になり得ます。この構図に気づいたときは、正直ぞっとしたものでした。

本当に頼れるPMを見極めるたった1つのアプローチ

プロジェクトを成功に導く「本物のPM」とは、単にクライアントの要望を代弁するご用聞きではなく、しっかりとした「システム開発の現場経験」を持つ人物です。開発経験があれば、ベンダーが提示してくる工数や金額に対して「これは本当に妥当か」を客観的に見極めることができます。「この機能ならこの構成で簡単に実装できる」「ここまでの作り込みを求めると難易度が跳ね上がりコストがかさむ」といった現場感覚を持っているからこそ、事実に基づいた中立的で合理的な判断を下せるのです。

こうした優れたPMを契約前に見極めるには、非常に有効な方法があります。それは契約前の段階で、「あなたならどのようなシステム構成で構築し、費用と期間はどれくらいかかると見立てるか」という概算の見積もりを出してもらうことです。システム構造の知見と開発経験が豊富でなければ、要件の初期段階で現実的な見立てを作ることは不可能です。この「事前見立て」を私が必ず求めるようにしたことで、口達者なだけのご用聞きPMを確実に排除し、本当に現場をコントロールできるパートナーを選ぶことができるようになりました。

自社主導の体制構築がDX成功への最短ルート

ベンダー任せのシステム開発が遅延・失敗しやすいのは、自社側に開発現場の感覚を持ち、中立的に判断できるPMが存在しないからです。外部から高額なコンサルタントを雇っても、開発未経験者であればベンダーとの摩擦を生み、かえってプロジェクトの長期化とコスト増を招くリスクすらあります。

自社主導で導入を進めるためには、「現場の開発経験があり、事実に基づいて工数や費用の妥当性を判断できるPM」の存在が不可欠です。契約前に具体的なシステム構成や概算見積もりの提示を求めて、その人物の実効性を見極めることを、私はどの現場でもお勧めしてきました。正しい知見を持ったPMを自社の司令塔として立てることこそが、無駄なコストと期間の遅延を防ぎ、事業成果に繋がるシステム導入を実現する最も確実な道筋なのです。