ラストワンマイルは「内製化」一択。ベンダーに追加発注せず、現場が自ら解決する道を選んだ理由

ラストワンマイルは「内製化」一択。ベンダーに追加発注せず、現場が自ら解決する道を選んだ理由

現場を悩ませる「入力手前」の加工問題

これまで数多くのパッケージソフトや基幹システムの導入に携わってきましたが、どんなプロジェクトでも共通して最も時間がかかる壁があります。それが、システムへデータを入力する直前の加工プロセス、いわゆる「ラストワンマイル」問題です。

どんなに高額で優れたシステムを導入しても、あるいは自社の要望をすべて詰め込んだスクラッチ開発を行っても、既存の業務データとシステムが求めるデータ形式のズレは必ず発生します。このズレを埋めるために、現場ではExcelにデータを貼り付け、半角スペースを除去したり、取引先コードのハイフンを置換で消したりといった、地味で細かい手作業が日々繰り広げられているのです。

どれほど分厚いマニュアルを作っても、手順の微妙なニュアンスは担当者しか分からず、引き継ぎのたびに業務が停滞する――。私自身、こうした現場の不完全なデータ運用に頭を抱える経営者や管理職の姿を何度も目にしてきました。

「ベンダー発注」という一般論が失敗を生む

システム導入時の「ラストワンマイル」で問題が生じた際、多くの企業がとる選択肢は「社内のシステム部に頼む」か「外部のシステムベンダーに追加発注する」のどちらかです。一見すると専門家に頼むのが最も確実で安全な「正攻法」に思えるかもしれません。しかし、ここに大きな罠が存在します。

わずかなデータの置換やフォーマット整形のためだけにベンダーへ見積もりを依頼し、要件定義を行い、開発費を払って納品を待つ。これではコストが膨らむだけでなく、現場の変化に合わせた迅速な改善が一切できなくなってしまいます。「小さな修正はプロに任せるべきだ」という一般論を鵜呑みにしている限り、永遠に外部依存の構造から抜け出すことはできません。

この「ラストワンマイル」の領域こそ、外部へ発注して解決するのではなく、自社内で完結させる「内製化」しかない、というのが私の実感です。

ExcelマクロとGAS+AIが変える内製化の壁

「プログラミング知識のない現場に内製化など不可能だ」と思われるかもしれません。ですが、求められるのは大規模なシステム構築ではなく、ExcelマクロやGoogle Apps Script(GAS)といった手軽な自動化ツールの活用です。

プログラミングをイチから書くのは難しくても、「他人が書いたコードを読む」「既存のコードを少し修正する」だけであれば、わずか1〜2週間の訓練で誰でもできるようになります。さらに強力な追い風となっているのが、ChatGPTなどの生成AIツールの存在です。

エラーが出るコードや「やりたいこと」をそのままAIに入力すれば、AIがコードの意味を丁寧に解説し、修正案まで一瞬で作成してくれます。無料あるいは極めて低コストで使えるAIをパートナーにすれば、専門知識のない現場スタッフであっても、日常のデータ加工プロセスを自力で自動化できるようになるのです。

現場の小さな自動化がDXの第一歩となる

大規模なコアシステムの開発やインフラ構築であれば、当然ながらプロのベンダーに頼むべきです。しかし、日々の業務で発生する「ちょっとした手作業」の自動化まで外注していては、組織の機動力が削がれてしまいます。

現場の担当者が自らマクロやGASを組み、AIを活用してラストワンマイルの手作業を自動化していく。この成功体験の積み重ねこそが、属人化を排除し、業務効率を劇的に高める土壌を作ります。

自社のデータを自社の手でスムーズに扱う体制を整えること。これこそが、中小企業が目指す価値のある実効性の高い「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の正体だと、私は感じています。

ラストワンマイルを内製化し、真の生産性向上へ

あらためて強調したいのは、システム導入における「ラストワンマイル」の加工処理は、ベンダーに追加発注するのではなく、自社で内製化してこそ道が開けるという点です。

手動で行われるデータ変換作業は属人化を招き、引き継ぎやマニュアル運用で多大なロスを生みます。しかし、大規模な開発とは異なり、この領域の解決策は現場の手に届くところにあります。ExcelマクロやGAS、そしてAIツールを組み合わせれば、わずか数週間の学習で誰でもデータ加工の自動化を実現できます。

外注に頼らず、現場主導で業務を改善する組織文化を作り上げること。ラストワンマイルの内製化に果敢に挑戦することこそが、中小企業が競争力を高め、真の生産性向上を達成するための最良の道筋だと、今は確信しています。