ソフトウェア会社でマネージャーになりたての頃、私はプロジェクトの進捗管理の方法に非常に頭を悩ませていました。とりあえずガントチャートを引き、開発やテストといった工程を設定して、週に1回ほどのミーティングでメンバーに「進捗はどうですか?」と確認する。そんな、どこにでもあるような管理手法をとっていました。
報告される進捗率は10%、20%、50%……と順調に上がり、一見すると予定通りに進んでいるように見えます。しかし、80%を過ぎたあたりから雲行きが怪しくなり、「ちょっと遅れています」という報告が入り始めます。そこからは、進捗が驚くほど伸びなくなります。結局、最後は徹夜続きでバタバタと終わらせるのが常態化してしまっていました。このような状況に陥っている組織は、意外と多いのではないでしょうか。
ボトムアップ型の落とし穴
当時の開発期間は3ヶ月ほどでしたが、今思えば、最初の1〜2ヶ月はゆったりと構え、3ヶ月目に入ってからようやく本気を出して帳尻を合わせようとする人が多かったのです。また、通常のシステム開発は「データベースの構築」から始まり、「モジュールの作成」「単体・結合テスト」を経て、最後に全体を組み上げるというボトムアップの手順で行われます。
このやり方には大きな落とし穴があります。部品単位で見ているうちは、全体としてあとどれくらいの作業が残っているのか、設計は本当に正しいのか、組み立てる際に足りないものがないかが非常に見えにくいのです。これが「進捗が見えない」最大の原因でした。
「3つのハードル」で進捗を可視化する
そこで私は、3ヶ月の工程に1ヶ月ごとの明確な「ハードル」を設け、進捗の定義を仕組み化することにしました。
- 第1段階(1ヶ月目):画面(モック)の完成(進捗50%)
- まずは中身を作る前に、全ての画面を作らせ、レビューを通します。画面が出来上がれば、必要な画面数、ボタン(機能)の数、裏側で必要なデータベースの量が物理的に把握できます。全体像が見えることで、逆算して「本当に終わりそうか」の判断が早期に可能になります。
- 第2段階(2ヶ月目):機能の実装(進捗80%)
- バックエンドやフロントUI、データベースを作り込み、「だいたい動く」状態まで持っていき、再度レビューします。
- 第3段階(3ヶ月目):最終調整とテスト(進捗100%)
- 最後の1ヶ月は、微調整やマニュアル・ドキュメント作成、徹底したテストの時間として確保します。
進捗管理の極意は「現物確認」にあり
この方法を導入したことで、進捗管理は劇的に安定しました。締め切り直前の徹夜は激減し、チーム全体が安心して仕事を進められるようになったのです。
進捗管理において最も大切なのは、エンジニアの自己報告を鵜呑みにすることではありません。マネージャー自身が「画面完成で50%」といった明確な基準(フレームワーク)を設定し、その都度、口頭の報告ではなく実際の「現物」を見て判断することです。
現物を見ずに話を聞くだけでは、悪気はなくても結果的に誤った報告になってしまうことがあります。「現物確認」こそが、プロジェクトを成功に導く進捗管理の極意なのです。