クラウド会計freee APIで請求書の入金状況を自動チェック。手動での確認をゼロにした会計BPRの手順

クラウド会計freee APIで請求書の入金状況を自動チェック。手動での確認をゼロにした会計BPRの手順

経理と営業の間で起きていた「未入金チェック」の非効率

中小企業から一部の中堅・製造業に至るまで、クラウド会計「freee」の導入は広く定着してきました。私の会社でも会計freeeおよび人事労務freeeを導入し、業務のバックオフィス化を進めていました。しかし、企業規模が大きくなり取引件数が増えるにつれ、ある業務が現場の大きな負担として浮き彫りになりました。それが「請求書の入金遅延チェックと、営業担当者への連絡」です。

freeeを使えば、銀行口座から入金データを自動取得し、画面上でマッチングを行って消し込むこと自体は非常にスムーズです。しかし、入金期限を過ぎても支払われない「未入金請求書」が発生した場合、誰がそれを確認し、いつ営業へ連携するのかという運用はアナログなままでした。毎月、月末から月初にかけて経理担当者が未入金一覧を目視で抽出し、「〇〇社の入金が確認できないので、営業の〇〇さんに連絡してください」と手動でメールを送る。営業側も「すでに確認済み」「相手方の手違いだった」など個別に打ち返す……。この地味で手間のかかる伝言ゲームが、社内の貴重なリソースを削っていたのです。

高価なERPは不要。freee+APIで「足りない機能」を自作する

「もっと高度で自動化されたシステムにするには、数千万円規模の大手ERPを導入するしかないのか」――多くの経営者がここで頭を悩ませます。確かに標準機能のfreeeでは、大企業の複雑なワークフローや細かい自動通知機能に物足りなさを感じる場面があるのは事実です。しかし、高額なシステム投資を行わずにこの課題を解決する手段があります。それが「API(Application Programming Interface)」を活用した業務プロセスの再構築(BPR)です。

APIとは、いわばソフトウェアに対する「専用の裏口」のようなものです。画面上のボタンを人間がマウスでクリックすることなく、外部のプログラムからデータを一括で取り出したり、更新したりできます。会計freeeには堅牢で扱いやすいAPIが標準で用意されています。「API開発には高度なプログラミング言語と専用サーバーが必要だ」という一般論も、現代では過去の思い込みに過ぎません。Googleが提供する「Google Apps Script(GAS)」を使えば、特別な開発環境を作ることなく、誰でも無料でGoogleスプレッドシート上にAPI連携処理を組み込むことができるのです。

夜間の完全自動判定とSlack連携で「手作業ゼロ」を実現する

具体的に構築した仕組みは非常にシンプルかつ強力です。GASのタイマー(トリガー)機能を使い、毎夜指定した時間に自動でプログラムを走らせます。プログラムはfreeeのAPIを経由して「請求書一覧」「得意先」「入金期限」「消し込み状況」といったデータを一括取得します。そして、入金期限から指定日数(たとえば3日)を超過しているにもかかわらず、消し込みが完了していない請求書を自動的に判定・抽出します。

判定された結果はGoogleスプレッドシートへ自動で一覧化されると同時に、社内コミュニケーションツールである「Slack」の専用チャンネル(未入金対応スレッド)へ自動投稿されます。投稿には「得意先名」「金額」「担当営業名」が記載され、営業担当者はその通知を見るだけで即座に顧客へ状況確認を行えます。この一連のプロセスにおいて、経理担当者が手動で確認・抽出・連絡を行う作業は文字通り「ゼロ」になりました。自動化にかかった費用は、GASとGoogleスプレッドシートを利用しているため「完全無料」です。

無料のクラウド連携が生み出す「ERPに負けない」会計BPR

今回ご紹介した事例は、単なる作業の省力化にとどまりません。「クラウド会計システム単体の機能に頼る」という固定概念を捨て、APIをハブにして自社の業務に合ったツールを自作接続する――これこそが、中小企業が目指すべき最も費用対効果の高い会計BPRの姿です。大手ERPを導入すれば莫大なライセンス料とカスタマイズ費用が発生しますが、既存のfreeeと無料のGASをAPIでつなぐだけで、高額システムと同等以上の自動チェック環境を手に入れられます。

会計freeeはもちろん、人事労務freeeなど主要なクラウドサービスには充実したAPIが備わっています。自社の「ちょっとした手作業の不便」を諦めて受け入れるのではなく、まずはAPI連携という選択肢に目を向けてみてはいかがでしょうか。費用を1円もかけることなく、業務の現場を劇的に変える自動化の第一歩を踏み出すことができます。